近況抄記・続:写真を交えて (2/2)

続いて、国内編。この2年間に手元に残っていた写真から。

まずは九州への小旅行から。青空が見下ろしているこの港町は長崎。
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坂を上った先に並ぶ、中国文化の色濃い寺院やカトリック教会に、
この街が地理的にだけでなく文化的にも、日本と外界との橋渡し役であったことを感じる。
珠玉は坂の上の大浦天主堂。
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広島でも見たことがあったけれど、原爆資料館の展示にはやはり胸をえぐられるものがある。
平時に生きているということは当然のことではないと思い起こされる。
そして今は美しいこの街が焦土から再興するまでにどれだけの苦労があったことだろう。
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続いて熊本へ。
復元天守ながら黒壁が映える熊本城。
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自然の大きさを感じる阿蘇山火口。
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この小旅行の最後は関門海峡・巌流島。
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子供の頃、吉川英治の「宮本武蔵」が好きで、長大な小説ながら何度も読んだものだった。


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国内でほぼ最遠の地、西表島。
マングローブの亜熱帯ジャングルに東京の喧騒ははるか遠くに感じられる。
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夏、東北。

休みを取れた日がちょうどねぶた祭りの日だと知って、慌てて東北行きの予定を決める。
残席わずかの新幹線に飛び乗って、夕方になんとか青森着。
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勇壮な太鼓の囃子に、どこか北国らしい純朴さが感じられるのがいい。

兵どもが夢のあと、平泉。
華やかなりし英雄が生きた悠久の大地の記憶を感じる。

中尊寺金色堂。
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義経最期の地と伝えられる高館。
ここからみたこの雄大な北上川は、かの義経の目にも焼きつけられていただろうか。
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七夕祭りで観光客を集める仙台へ。
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松島。数百年の昔から来訪者に愛でられ続けてきた情景に時間を忘れる。
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異文化に触れるのも楽しいけれど、
落ち着いた日本の様式美に心休まる時を楽しむのもいい。

京都・東福寺。
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清水寺。見なれた観光地もたまに訪れるとまた良いもの。
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清水寺のお隣、高台寺。
やはり京の庭は山が借景に馴染んでいてこそ。こればかりは東京では再現できない。
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正月、伏見稲荷大社。
どこまでも続く赤鳥居の列もまた京都の情緒を醸し出すもののひとつ。
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東京に戻る新幹線に乗る前にちょっと立ち寄って京都を感じてこれるのが
京都駅前にその威容を見せる東西の本願寺。
このときは最終の電車になってしまい、東本願寺の門も既に閉じられていたものの、
夜の静寂に佇むその荘重な姿の厳めしさもまたいい。
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故郷は、どこか心に残っている原風景との再会を楽しめる場所。

竹林を抜ける道の先は、幼少の頃には不思議と冒険心とにつながっていたっけ。
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田んぼの畔につくしを見つけるのも、なんだか嬉しくなる。
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山の連なるこの盆地の景色自体に染み込んでいる数々の記憶。
深い青空に浮かぶ雲の形を見て想像を膨らませたりしなくなったのはもういつからだろうか。
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木片で作ってもらったお気に入りのトンネルでひとやすみ。
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うん? ボクは今どこを撮られてるんだろう・・・?
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遠くまで足を伸ばさずとも、はっとする光景を東京で見つけるのもまたいいもの。
 

お堀に映える夜の日比谷通り。
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東京タワーが映り込んで煌きを見せる愛宕グリーンヒルズ。
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春の梅。旧芝離宮にて。
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そして千鳥ヶ淵の桜。
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街の雑踏を横目に、季節を知らせてくれる秋の花々もまたいい。
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最後は、夕闇が迫る浜離宮の夕暮れ。
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附記:
今日ようやく退院しました。
しばらく無理は避けて身体を少しずつ慣らしていきます。

近況抄記・続:写真を交えて (1/2)

文章だけの近況報告も味気ないので、
旅先の写真を中心に、この2年間の簡単な記録をご紹介。
前半としてまずは国外分から。

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旅行で行ったトルコより。
エフェソス遺跡。
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ローマ帝国全盛期に帝国の東方版図の中心都市だっただけあって、トルコという
今では一見意外な場所にローマに比肩するほどの規模の遺跡が残されている。

トルコ中部高地の奇岩群。
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イスタンブールの大寺院、アヤソフィア。
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アヤソフィアと相対する大寺院ブルーモスク。
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トプカプ宮殿の正門。
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イスタンブールは、東ローマ帝国の首都コンスタンティノープルとして、そしてその後
オスマン帝国の首都として、千数百年にわたって西欧と対峙する大国の首都であり続けた街。
この街に蓄積された文化財の数々、そして中心部の王宮や城壁がその歴史の威厳を物語る。

観光客が訪れない小さなモスク。夕陽がオリエンタリズムをかきたてる。
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この寺院を訪ねる。観光開発された大モスクにない何かを求めて。
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街の喧騒からふっと切り離されたような静寂の小空間に靴を脱いで上がる。
夕刻にあわせて数人の地元住民が参拝に訪れた。
そこで感じたのは、日本でお寺を訪ねたときの感覚を思い起こさせる懐かしさ。
日常生活に溶け込んだ寺院の静寂に、イスラムを異物として扱う拒絶感覚が氷解された。
戦火のイメージと結び付けがちなイスラムだが、少なくともトルコのような穏健イスラムは
日本における仏教の位置付けと変わらないのではないか、と夕刻の静寂に想う。

歴史地区から街に目を移すと、映画に出てきそうな坂道が海岸まで延びる。
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中国、上海近郊の蘇州にて。蘇州は中国有数の庭園群を抱える街。

留園。
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奇岩を愛でる感覚を日本人はそれほど共有していないけれど、じっくり見ていると
次第に味わい深く感じられてくる。

拙政園。
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日本にはない様式も端々に見られるが、
遠景を借景するなど、日本庭園と美意識の共有を感じる。
日本語を勉強中の地元の大学生と偶然知り合って、
ガイドになるための練習をしたいからと言って広い庭園を案内してもらえる幸運に恵まれた。

虎丘。
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紅葉に異国の地で秋を感じる。

観光地からふと目を横に遣ると、途上国の実情が顔を出す。
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一方で、郊外の新規開発地区には高層マンションが立ち並ぶ。
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中心街では、近代中国のステレオタイプに出くわすことも。
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一方で繁華街のデパートに足を伸ばせば、地方都市でも日本と遜色ない光景を目にできる。
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この中規模の地方都市では、路地に土煙が舞い、物乞いが歩く発展途上国としての顔と、
高層マンションや最新のオフィスビル、デパートが立ち並ぶ日本と変わらない生活水準を得た
新興国としての顔とが、奇妙なほどに隣接して存在している姿にこの国の現実を見出す。

対照的に、すでにアジア経済の中心都市の一角としての地位を得た大都市、上海。
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上海環球金融中心が摩天楼の新たな頂を形作る。
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この浦東地区ではこのビルをさらに超える大規模開発プロジェクトが続くようだが、
世界経済の停滞は今後のこの街をどう運命づけるだろうか。

浦東地区の対岸には美しい姿を見せる旧居留地区。
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今は観光地となって人々を魅了するこの美しい歴史地区は一方で、
中国が大国の地位を逸した近代史の象徴でもある。

*             *             *

米西海岸、ロサンゼルス・サンディエゴへ。
仕事だったのでLAX空港から目的地までの往復のみで、ほとんど観光は出来ず。

広いハイウェイが続く荒野と、
「オバマ政権の鉄道計画?全然駄目だね」というモーダルシフトなど意に介さぬことばに
アメリカという国の一片を感じる。
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どこまでも続く店内。これもいかにもアメリカ的なるもの。
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記事が長くなったので国内分は別記事で。